はじめに
「SAP導入は失敗しやすい」
そういった話を、
一度は聞いたことがあるかもしれません。
- 導入が長期化した
- 予定よりコストが膨らんだ
- 現場に定着しなかった
確かに、
SAP導入がうまくいかなかった事例は存在します。
しかし重要なのは、
それが本当に「SAPというシステムの問題」なのか
という点です。
本記事では、
SAP導入プロジェクトにおいて
繰り返し見られる「失敗の本質」を整理します。
1. 失敗の原因は「SAP」ではない
結論から言うと、
SAP導入が失敗する原因の多くは
SAPそのものではありません。
失敗の正体は、
以下のような要素にあります。
- 導入目的が曖昧
- 業務を変える覚悟がない
- プロジェクトの進め方に無理がある
SAPは、
「入れれば何とかしてくれる魔法の箱」
ではありません。
どう使うか、どう向き合うか
がすべてです。
2. よくある失敗パターン①
導入の目的が共有されていない
SAP導入プロジェクトで、
最も多い失敗要因の一つが
目的の不一致です。
- 経営:内部統制を強化したい
- 経理:決算を早くしたい
- 現場:今の業務を変えたくない
- IT:とにかくシステムを切り替えたい
この状態でプロジェクトを進めると、
意思決定がブレ続けます。
結果として、
- 要件が膨らむ
- 判断が遅れる
- 不満だけが残る
という状況に陥ります。
3. よくある失敗パターン②
現行業務をそのまま再現しようとする
「今の業務をそのままSAPで再現したい」
これは非常によく聞く要望ですが、
失敗の入り口でもあります。
SAPは、
- 標準化
- 再現性
- 統制
を重視して設計されています。
現行業務を無理に再現しようとすると、
- アドオンが増える
- 保守が難しくなる
- 将来の拡張性が失われる
結果として、
SAPの強みを自ら捨てることになります。
4. よくある失敗パターン③
Fit & Gapを「Gap探し」にしてしまう
Fit & Gap分析は、
SAP導入において重要なプロセスです。
しかし現場では、
これが次のように誤解されがちです。
「SAPに合わない部分(Gap)を洗い出す作業」
本来のFit & Gapは、
- Fit:SAP標準でできること
- Gap:業務を変えるか、拡張するか判断する材料
です。
Gapを埋めることが目的ではありません。
「業務を変えるか」「システムを変えるか」
を判断するためのプロセス
であることを忘れると、
プロジェクトは迷走します。
5. よくある失敗パターン④
SAP導入をIT部門任せにする
SAP導入は、
単なるITプロジェクトではありません。
それにもかかわらず、
- IT部門が主導
- 業務部門は受け身
- 経営は進捗報告を見るだけ
という体制で進めてしまうケースがあります。
この場合、
- 業務要件が固まらない
- 意思決定が遅れる
- 導入後に不満が噴出する
といった問題が起きやすくなります。
6. 成功するプロジェクトに共通すること
一方で、
SAP導入がうまくいくプロジェクトには
共通点があります。
- 導入目的が明確
- 経営が意思決定に関与している
- 業務を見直す前提で進めている
- SAP標準を理解し、尊重している
これらは特別なことではありません。
当たり前のことを、当たり前にやっている
だけです。
7. SAP導入で本当に問われるもの
SAP導入で問われるのは、
ITスキルや製品知識だけではありません。
- 会社として何を変えたいのか
- どこまで標準に合わせられるのか
- 経営としてどう関与するのか
こうした問いに、
きちんと向き合えるかどうかです。
SAP導入は、
会社の意思決定の質を映し出す鏡
とも言えます。
おわりに
SAP導入が失敗する理由は、
SAPが難しいからでも、
SAPが高いからでもありません。
向き合い方を間違えるから
失敗するのです。
逆に言えば、
正しい視点と進め方を持てば、
SAPは非常に強力な経営基盤になります。
次回は、
「SAP導入はITプロジェクトではない」
というテーマで、
さらに一段踏み込んだ視点から解説します。