はじめに
SAPについて話をしていると、
ほぼ必ず聞かれる質問があります。
- 「SAPって全社システムですよね?」
- 「まずは会計だけ入れることもできますか?」
- 「最初から全部入れないと意味がないですか?」
これらの質問は、
SAPの本質を理解しようとしているからこそ出てくる疑問です。
本記事では、
SAPが「全社システム」なのか
「会計システム」なのか、
その問いに対して、導入現場の視点で整理します。
1. 結論:SAPは「全社システム」であり「会計が中核」
結論から言うと、
SAPは 全社システム です。
ただし、
その中核にあるのは 会計(FI) です。
SAPは、
販売・購買・在庫・生産といった
あらゆる業務データを集約し、
最終的に会計へとつなげる構造を持っています。
つまり、
- 業務が先
- 会計が後
ではなく、
業務と会計が最初から一体として設計されている
これがSAPの最大の特徴です。
2. なぜSAPでは会計が「中心」になるのか
SAPでは、
多くの業務処理が会計仕訳と直結しています。
- 物を仕入れれば、原価が動く
- 売上が立てば、収益が計上される
- 在庫が動けば、資産が変動する
これらはすべて、
業務の結果として自然に会計へ反映されます。
そのためSAPでは、
会計は「最後に数字を作る部門」ではなく、
業務全体をつなぐハブとして機能します。
この構造があるからこそ、
SAPは全社システムとして成立します。
3. 「まずは会計だけ導入する」は正解か?
実務上、
「まずは会計(FI)だけ導入したい」
という選択は、十分に現実的です。
むしろ、
- すべてを一気に導入する
- 現場がついてこられない
といったリスクを考えると、
FIを入口に段階的に広げるのは
非常に理にかなったアプローチです。
重要なのは、
会計だけを「部分最適」で入れるのか
将来の全社展開を見据えて入れるのか
この違いです。
4. 会計を入口にすることで得られるメリット
数字の信頼性が上がる
FI導入により、
会計ルールがシステム上で統一されます。
- 勘定科目
- 仕訳ルール
- 会計期間管理
これにより、
会社全体で「同じ会計言語」を持つことができます。
後続モジュールをつなぎやすくなる
SAPでは、
販売(SD)や購買(MM)などのモジュールは、
最終的にFIへデータを渡します。
そのためFIが整っていれば、
- 販売管理の拡張
- 購買・在庫管理の導入
- 原価管理(CO)との連携
を スムーズに進めやすくなります。
5. 失敗する「会計だけ導入」のパターン
一方で、
以下のような進め方をすると、
FI導入は失敗しやすくなります。
- 将来の業務拡張を考えていない
- 現行業務をそのまま再現しようとする
- 会計部門だけで完結させてしまう
会計だけ導入したつもりが、
結果的に 全社システムとして使えなくなる
ケースも少なくありません。
FIは入口であって、
ゴールではないことを意識する必要があります。
6. SAP導入をどう説明すべきか(セールス視点)
SAPを説明する際、
以下の言い方は非常に有効です。
「SAPは全社システムです。
ただし、導入の入口として
会計から始める企業が多いです。」
この一言で、
- 全社視点を持っている
- 現実的な導入プランも分かっている
という印象を与えることができます。
おわりに
SAPは、
全社システムか、会計システムか、
という二択で語れるものではありません。
全社を見据えた会計基盤
——それがSAPの正確な姿です。
導入の第一歩としてFIを選ぶことは、
非常に合理的な判断です。
重要なのは、
「どこまでを最終形と考えているか」。
その視点を持つことが、
SAP導入を成功させる第一歩になります。
次回は、
「SAP導入が失敗する本当の理由」
というテーマで、
導入現場のリアルについて掘り下げていきます。