はじめに
SAP導入を検討する際、
よく聞かれる質問があります。
- 「結局、何が良くなるのか?」
- 「今のシステムと何が違うのか?」
- 「導入したら現場は楽になるのか?」
SAP導入は、
単なるシステム刷新ではありません。
業務・会計・経営のあり方そのものが変わる
——それがSAP導入です。
本記事では、
SAP導入によって会社がどのように変わるのかを、
以下の3つの視点で整理します。
- 業務の視点
- 会計の視点
- 経営の視点
1. 業務はどう変わるのか
属人化から「再現できる業務」へ
SAP導入前の現場では、
以下のような状態が珍しくありません。
- Excelが乱立している
- 手作業の転記・集計が多い
- 特定の人しか分からない業務がある
SAP導入によって、
業務はシステム上で定義され、
「誰がやっても同じ結果になる」形に近づきます。
これは一見、
現場の自由度を奪うように見えるかもしれません。
しかし実際には、
- 引き継ぎが容易になる
- 人が変わっても業務が回る
- ミスが起きにくくなる
といった形で、
現場の持続性を高める効果をもたらします。
業務フローが「見える」ようになる
SAPでは、
取引の流れがシステム上で一貫して管理されます。
たとえば、
- 受注
- 出荷
- 請求
- 入金
といった一連の流れが、
途中で分断されることなくつながります。
これにより、
- どこで業務が滞っているのか
- どこにボトルネックがあるのか
が可視化され、
改善の議論ができるようになります。
2. 会計はどう変わるのか
会計が「結果」ではなく「プロセス」になる
SAP導入前の会計は、
しばしば「最後に数字を合わせる作業」になりがちです。
- 月末にまとめて仕訳
- Excelでの調整
- 理由を後から説明
SAPでは、
業務の発生と同時に会計データが生成されます。
そのため会計は、
- 後追いの集計
- 調整ありきの数字
ではなく、
業務プロセスそのものを反映した数字になります。
「なぜこの数字なのか」を説明できる
SAPでは、
会計仕訳の背景となる業務データを
辿ることが可能です。
- この売上は、どの受注から生まれたのか
- この原価は、どの取引に紐づくのか
こうした説明ができることは、
経理部門にとって大きな武器になります。
単に数字を作るだけでなく、
数字の意味を語れる会計へ変わるのです。
3. 経営はどう変わるのか
数字を見るスピードが変わる
SAP導入後、
経営層が最初に実感する変化の一つが
「数字を見るスピード」です。
- 月次決算の早期化
- リアルタイムに近い業績把握
- 部門別・事業別の可視化
これにより、
経営判断が「事後対応」から
「先手を打つ判断」へ変わっていきます。
経営と現場が同じ数字を見る
SAPでは、
現場・経理・経営が
同じデータを見て議論します。
これは当たり前のようで、
実は非常に重要なポイントです。
- 数字の正しさを疑う時間
- データの突き合わせ
こうした無駄が減り、
「次に何をするか」という
本質的な議論に時間を使えるようになります。
4. SAP導入は「ITプロジェクト」ではない
ここまで見てきた通り、
SAP導入の影響範囲は
業務・会計・経営に及びます。
そのため、
SAP導入を IT部門だけのプロジェクト
として進めると、うまくいきません。
- 業務部門の関与
- 経理部門の視点
- 経営の意思
これらが揃って初めて、
SAPは本来の価値を発揮します。
5. 「変わる覚悟」があるかどうか
SAP導入で最も重要なのは、
システム選定でも、
パートナー選定でもありません。
「会社として、どこまで変わる覚悟があるか」
です。
- 業務を見直せるか
- 標準に合わせる判断ができるか
- 経営が関与できるか
この覚悟がある会社では、
SAPは「高い投資」ではなく、
長期的に効き続ける経営基盤になります。
おわりに
SAP導入によって変わるのは、
画面や操作方法だけではありません。
- 業務の進め方
- 会計の考え方
- 経営の判断スピード
会社の「当たり前」が、
少しずつ、しかし確実に変わっていきます。
次回は、
「SAPは全社システムなのか? それとも会計システムなのか?」
というテーマで、
SAP導入の入口としてのFI領域について掘り下げます。