はじめに
「SAPは高い」
SAP導入の話をすると、ほぼ必ず聞く言葉です。
実際、ライセンス費用・導入コスト・運用コストだけを見れば、
他のERPや会計システムと比べて安いとは言えません。
それでも、
世界中の大企業、グローバル企業、そして成長企業は、
何十年にもわたってSAPを選び続けています。
なぜでしょうか。
本記事では、
「SAPとは何か」ではなく、
「なぜSAPは"高いのに"選ばれ続けるのか」
を、会計・IT・導入現場の視点から整理します。
SAP導入を検討している方だけでなく、
「SAPをどう説明すればよいか悩んでいる方」にとっても、
判断材料になれば幸いです。
1. SAPは「会計ソフト」ではない
SAPはしばしば、
- 高機能な会計ソフト
- 大企業向けのERP
として説明されます。
しかし、これらはSAPの一側面でしかありません。
SAPの本質は、
企業活動を「一つの事実(Single Source of Truth)」として管理するための基盤
にあります。
売上、仕入、在庫、原価、人件費。
本来は一続きの企業活動であるにもかかわらず、
多くの企業では部門やシステムごとにデータが分断されています。
SAPでは、これらを
一つのデータモデル・一つのルール
で管理します。
その結果、会計データは
「後から集計された結果」ではなく、
事業活動そのものをリアルタイムに反映した数字
になります。
この思想こそが、
SAPが単なる会計ソフトと根本的に異なる理由です。
2. なぜSAPは「高い」と言われるのか
SAPが高いと言われる理由は、主に3つあります。
① コストが"見える"
SAPは、
ライセンス費用・導入費用・保守費用が明確に提示されます。
一方で、Excel運用や既存システムの属人化コスト、
将来的な業務リスクは、
多くの場合「見えないコスト」として扱われます。
SAPはコストを隠しません。
それが「高く見える」一因です。
② 業務整理の負荷がSAPに転嫁される
SAP導入では、業務の見直しや整理が避けられません。
しかし本来これは、
どのシステムを導入する場合でも必要な作業です。
それがSAP導入のタイミングで顕在化するため、
「SAPは大変」「SAPは高い」という印象につながります。
③ 「今のやり方」を変える必要がある
SAPは、
現行業務をそのまま再現するためのシステムではありません。
標準化・統制・再現性を重視するため、
これまでのやり方を見直す必要があります。
この"変化のコスト"が、
SAPを高く感じさせる最大の理由かもしれません。
3. それでもSAPが選ばれ続ける理由
それでもSAPが選ばれ続けるのは、
経営視点で見たときのリターンが圧倒的に大きいからです。
グローバル標準であること
SAPは、世界中の企業で使われています。
多言語・多通貨・各国会計基準・税制への対応は、
後付けではなく設計思想の一部です。
内部統制・説明責任に強い
「その数字は、なぜそうなったのか?」
SAPでは、
取引の流れを遡って説明することが可能です。
これは、上場企業やグローバル企業にとって
非常に大きな価値を持ちます。
成長や変化に耐えられる
M&A、事業拡大、組織再編。
企業が成長すればするほど、
場当たり的なシステムでは限界が来ます。
SAPは、
「今」ではなく「将来」を前提に設計された基盤
です。
4. SAPが本当に価値を発揮する瞬間
SAPの価値は、
導入直後よりも 数年後 に効いてきます。
- 事業が拡大したとき
- 組織が複雑化したとき
- 数字の説明責任を強く求められたとき
そのとき初めて、
「SAPを入れておいてよかった」
と実感する企業は少なくありません。
5. SAPが「安くなる会社」と「高くなる会社」
SAPが安くなる会社
- 導入目的が明確
- 業務を見直す覚悟がある
- 経営が主体的に関与している
SAPが高くなる会社
- 現行業務をそのまま再現しようとする
- SAP導入をIT部門任せにする
- 導入そのものがゴールになっている
SAPの価格は、
システムではなく「向き合い方」で決まる
と言っても過言ではありません。
おわりに
SAPは、確かに安いシステムではありません。
しかしそれは、
単なるITツールではなく、
企業経営の基盤そのものだからです。
SAP導入を検討する際は、
「いくらかかるか」だけでなく、
「何を得たいのか」「どこまで変われるのか」
という視点で考えることが重要です。
本記事が、
SAP導入を検討するうえでの
一つの判断材料になれば幸いです。
次回は、
「SAP導入で会社は何が変わるのか?」
をテーマに、
より具体的な業務・会計の変化について掘り下げていきます。